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グローバルヒストリーとは
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- グローバルヒストリーとは?
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グローバルヒストリーとは、一国史(一つの国の歴史)の枠組みを超えて、広い範囲を研究する歴史学の分野です。
世界のグローバル化が進むなか、注目が高まっている研究分野です。
グローバルヒストリーの特徴
研究対象となる期間が長い
1つ目の特徴は「研究対象となる期間が長い」ことです。
特定の時代のみに偏らず、広い時代を研究します。
場合によっては、原始時代~現代までの全時代を研究することもあります。
研究対象となる空間が広い
2つ目の特徴は「研究対象となる空間が広い」ことです。
特定の国のみに偏らず、広い地域を研究します。
場合によっては、全世界を研究することもあります。
グローバルヒストリーの分類
トップダウン/ボトムアップ
アメリカの歴史学者リン・ハントは、グローバルヒストリーをトップダウンとボトムアップの2つに分類しています。
- トップダウン・・・上からの歴史研究。世界全体を大局的に分析する。
- ボトムアップ・・・下からの歴史研究。一定の地域を局所的に分析する。
トップダウンは、世界システム論などの経済史との関係が深いです。
ボトムアップは、文化史との関係が深いです。
3種類のグローバルヒストリー
ドイツの歴史学者セバスティアン・コンラートは、グローバルヒストリーを3つに分類しています。
- 広範囲を研究するタイプ
- 交換と接続に注目するタイプ
- 統合に注目するタイプ
1つ目のタイプは、特定の時代・テーマの歴史を描くもので、最もシンプルなタイプです。
2つ目のタイプは、人・思想・物などの境界を越えた移動を研究するもので、最も人気があるタイプです。
3つ目のタイプは、グローバルな構造をもとに個々の事例を研究するもので、近年注目されているタイプです。
発散/収斂/伝染/システム
アメリカの歴史学者パミラ・カイル・クロスリーは、グローバルヒストリーを発散・収斂・伝染・システムの4つに分類しています。
- 発散 ・・・1つの地点から広がっていく様子を研究する。
- 収斂 ・・・別々の社会が同じゴールに向かっていく様子を研究する。
- 伝染 ・・・他の社会との接触による変化を研究する
- システム・・・複数の社会を包括する構造を研究する。
発散は、言語・文化・遺伝子の広がりを扱います。
収斂は、農耕の開始・産業化・近代化などの社会の均質化を扱います。
伝染は、感染症などの伝染を扱います。
システムは、世界システム論(世界経済を分析するもの)などの構造を扱います。
批判・問題点
個別の出来事を軽視している
グローバルヒストリーに対しては「個別の出来事を軽視している」という批判があります。
これは研究範囲が広いための欠点で、特にトップダウン(世界全体を大局的に分析する)のグローバルヒストリーに当てはまります。
この欠点の改善案として、ミクロストリア(とても狭い範囲を研究する歴史学)の要素を組み込む「ミクロ空間史」が提案されています。
おすすめ本
- グローバルヒストリーのおすすめ本は?
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パミラ・カイル・クロスリー『グローバルヒストリーとは何か』、リン・ハント『グローバル時代の歴史学』、セバスティアン・コンラート『グローバル・ヒストリー―批判的歴史叙述のために』がおすすめです。
これらはグローバルヒストリーの主要な概説書であり、日本語版が入手しやすいものとなっています。
グローバルヒストリーとは何か
『グローバルヒストリーとは何か』は2008年に発表されたパミラ・カイル・クロスリーの作品です。
グローバルヒストリーを発散・収斂・伝染・システムの4種類に分類し、それぞれの特徴を解説していきます。
この記事で紹介している本で最も読みやすく、グローバルヒストリーの入門に最適です。
グローバル時代の歴史学
『グローバル時代の歴史学』は2014年に発表されたリン・ハントの作品です。
グローバルヒストリーをトップダウン・ボトムアップの2種類に分け、それぞれを比較しながら解説していきます。
20世紀以降の歴史研究の潮流まで解説されており、グローバルヒストリーの研究史上の立ち位置まで理解できます。
グローバル・ヒストリー―批判的歴史叙述のために
『グローバル・ヒストリー―批判的歴史叙述のために』は2016年に発表されたセバスティアン・コンラートの作品です。
グローバルヒストリーを類似の研究手法と比較しつつ、空間・時間・ポジショナリティなど複数の観点から分析していきます。
やや難易度は高いものの、考察が深く、とても内容が充実した作品です。
おわりに
以下の記事では、歴史学をまとめて解説しています。
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