【保存版】世界システム論をわかりやすく解説【ヘゲモニー国家】

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目次

世界システム論とは

重要度
難易度
世界システム論とは?

世界システム論とは、世界を「中核」・「半周辺」・「周辺」の3つに分類して世界経済を分析していく手法です。

1974年、アメリカの社会学者・歴史学者のイマニュエル・ウォーラーステインによって提唱されました。

一国単位で経済を分析するのではなく、世界経済を一つのシステムとして捉えることを提案しました。

中核・半周辺・周辺

世界システム論では、世界を「中核」「半周辺」「周辺」の3つに分けて分析していきます。

それぞれのくわしい説明は以下の通りです。

中核

「中核」とは、世界システム論における経済の中心地です。

最も経済的に発展しやすいエリアで、強力な国家機構や国民文化が形成されることが多いです。

「中核」のなかでも圧倒的な経済力の国家は、ヘゲモニー国家(次章で解説)と呼ばれます。

半周辺

「半周辺」とは、「中核」と「周辺」の中間にあたる場所です。

「中核」に食糧や資源などを供給しつつ、「周辺」を支配しています。

「周辺」が「中核」に対して敵意を向けないための緩衝地帯としての役割もあります。

周辺

「周辺」とは、「中核」に従属しているエリアです。

「中核」に食糧や原材料を供給します。

強制労働が行われることもあり、国家としての自立性が低かったり、植民地である場合もあります。

各時代の世界システム

16世紀

16世紀の主な中核・半周辺・周辺は以下の通りです。

中核スペイン★・ポルトガル★・イギリス・北フランス・ネーデルラント
半周辺南フランス・北イタリア
周辺東ヨーロッパ・ラテンアメリカ
★は特に経済発展していた国

16世紀は、近代世界システムの成立期であり、特にスペインとポルトガルの影響力が絶大でした。

初期の世界システムは、ヨーロッパ諸国とアメリカの植民地によって構成されました。

17世紀

17世紀の主な中核・半周辺・周辺は以下の通りです。

中核オランダ★・イギリス・フランス
半周辺スペイン・ポルトガル・イタリア・プロイセン・オーストリア・スウェーデン・北アメリカ
周辺ラテンアメリカ諸国・東ヨーロッパ諸国・南ヨーロッパ諸国
★は特に経済発展していた国

17世紀は、世界経済の停滞期ながら、オランダが経済発展を実現しました。

この頃の世界システムも、ヨーロッパ諸国とアメリカの植民地によって構成されました。

18世紀・19世紀

18世紀・19世紀の主な中核・半周辺・周辺は以下の通りです。

中核イギリス★・フランス・ベルギー・プロイセン・スイス・アメリカ合衆国
半周辺スペイン・ポルトガル・イタリア
周辺ラテンアメリカ諸国・インド・オスマン帝国・ロシア・西アフリカ
★は特に経済発展していた国

18世紀・19世紀は、世界システムの拡大期であり、イギリスが世界経済の中心となった時代です。

またインド亜大陸・オスマン帝国・ロシア・西アフリカが新たに世界システムに組み込まれました。

ヘゲモニー国家

ヘゲモニー国家とは?

ヘゲモニー国家とは、世界システム論における圧倒的な経済力を持つ国家のことです。

生産・商業・金融のいずれの分野でも優れており、他の「中核」にあたる国家を上回る力を持ちます。

これまでのヘゲモニー国家は、17世紀中盤のオランダ、19世紀中盤のイギリス、20世紀中盤のアメリカの3つのみです。

以下では、この3つのヘゲモニー国家について詳しく解説していきます。

オランダ

オランダは、17世紀中盤のヘゲモニー国家です。

漁業・造船業を武器に、ヨーロッパ最大の商業国となりました。

この発展により、首都アムステルダムはヨーロッパの金融の中心地となりました。

イギリス

イギリスは、19世紀中盤のヘゲモニー国家です。

植民地を利用して巨大な貿易システムを形成し、また産業革命によって工業化を進め、経済大国となりました。

この時代はパクス・ブリタニカとも呼ばれています。

しかし1873年の「大不況」をきっかけにヘゲモニーを喪失しはじめ、その後はアメリカ・ドイツなどが台頭していきました。

アメリカ

アメリカは、20世紀中盤のヘゲモニー国家です。

19世紀後半から工業分野を大きく発展させ、第二次世界大戦が終戦した1945年からヘゲモニー国家となりました。

資源大国かつ農業生産能力も高いなど、これまでのヘゲモニー国家とは異なる特長があります。

1967年頃にヘゲモニーを喪失したとされるものの、現在でも世界有数の大国として知られています。

世界システム論の批判・問題点

世界システム論の批判・問題点は?

世界システム論の批判としては、「経済に偏っている」「上からの分析である」「ヨーロッパ中心的である」などがあります。

これらの批判・問題点については、以下でくわしく解説してきます。

経済に偏っている

1つ目の批判は「経済に偏っている」というものです。

政治・社会・文化の重要性を低く見積もりやすく、セバスティアン・コンラートは「市場の統合それ自体がどの程度まで権力の非対称的なバランスの産物であるのかという問題には、ほとんど注意が払われない」¹と指摘しています。

世界システム論の古典である『近代世界システム』も政治・文化・軍事・環境の軽視が指摘されており、主要な欠点となっています。

上からの分析である

2つ目の批判は「上からの分析である」というものです。

世界システム論の研究において、それぞれの出来事は世界システム論を前提として説明されるところがあります。

そのため、それぞれの出来事をフラットな視点で分析しにくく、この点が批判されます。

ヨーロッパ中心的である

3つ目の批判は「ヨーロッパ中心的である」というものです。

特に世界システム論の古典である『近代世界システム』はその傾向が強いと言われます。

ただし、この傾向の修正を試みる作品も数多く、アジアの重要性を指摘した『リオリエント』などの作品も知られています。

おすすめ本

世界システム論のおすすめ本は?

イマニュエル・ウォーラーステイン『近代世界システム』が最もおすすめです。

これは世界システム論の古典であり、世界システム論の概要を理解できる一冊です。

他の注目すべき作品としては、アブー・ルゴド『ヨーロッパ覇権以前』、アンドレ・グンダー・フランク『リオリエント』、ケネス・ポメランツ『大分岐』が挙げられます。

近代世界システム

『近代世界システム』は1974年に発表されたイマニュエル・ウォーラーステインの作品です。

世界システム論の古典であり、歴史学の必読書とされることも多いです。

15世紀~20世紀のヨーロッパ経済を中心に研究しており、近代~現代の経済史を深く理解できます。

ヨーロッパ覇権以前

『ヨーロッパ覇権以前』は1989年に発表されたジャネット・リップマン・アブー・ルゴドの作品です。

「13世紀世界システム」を研究対象としており、13世紀頃のヨーロッパ・中東・アジアの3つの交易システムについて論じています。

近代以前の世界システムについて学べる一冊です。

リオリエント

『リオリエント』は1998年に発表されたアンドレ・グンダー・フランクの作品です。

世界システムがヨーロッパで成立したことを否定し、1800年頃まで東アジアが世界システムの中心であったと主張しました。

先述の『近代世界システム』を批判した作品として有名です。

大分岐

『大分岐』は2000年に発表されたケネス・ポメランツの作品です。

ヨーロッパとアジアを比較し、なぜヨーロッパが経済成長したのかを分析します。

イギリスの産業革命の重要性を指摘したうえで、産業革命の発生は偶然であったと主張し、大きな論争をもたらしました。

おわりに

以下の記事では、歴史学をまとめて解説しています。

歴史学の基本をざっくり学びたい方は、こちらの記事もおすすめです。


参考文献・註

I.ウォーラーステイン『史的システムとしての資本主義』川北稔訳,岩波書店,1985.
I.ウォーラーステイン『近代世界システム 1600~1750』川北稔訳,名古屋大学出版会,1993.
I.ウォーラーステイン『近代世界システム 1730~1840s』川北稔訳,名古屋大学出版会,1997.
I・ウォーラーステイン『ポスト・アメリカ―世界システムにおける地政学と地政文化―』丸山勝訳,藤原書店,1991.
アンドレ・グンダー・フランク『リオリエント アジア時代のグローバルエコノミー』山下範久訳,藤原書店,2000.
川北稔『知の教科書 ウォーラーステイン』講談社,2001.
ジャネット・L・アブー・ルゴド『ヨーロッパ覇権以前(上)』佐藤次高・斯波義信・高山博・三浦徹訳,岩波書店,2001.
ジャネット・L・アブー・ルゴド『ヨーロッパ覇権以前(下)』佐藤次高・斯波義信・高山博・三浦徹訳,岩波書店,2001.
樺山紘一編著『新・現代歴史学の名著』中央公論新社,2010.
I.ウォーラーステイン『近代世界システム Ⅰ』名古屋大学出版会,2013.
三宅芳夫・菊池恵介編『近代世界システムと新自由主義グローバリズム』作品社,2014.
K.ポメランツ『大分岐』川北稔監訳,名古屋大学出版会,2015.
川北稔『世界システム論講義 ヨーロッパと近代世界』筑摩書房,2016.
セバスティアン・コンラート『グローバル・ヒストリー―批判的歴史叙述のために』小田原琳訳,岩波書店,2021.
小田中直樹『歴史学のトリセツ』筑摩書房,2022.


¹セバスティアン・コンラート『グローバル・ヒストリー―批判的歴史叙述のために』小田原琳訳,岩波書店,2021,p49.

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■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
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