【決定版】リュシアン・フェーヴルを解説【功績・経歴・代表作】

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目次

リュシアン・フェーヴルとは

影響力
作品
リュシアン・フェーヴルとは?

リュシアン・フェーヴル(1878-1956)はフランスの歴史学者です。

アナール学派(地理学・経済学・社会学などを歴史研究に統合しようとしたフランスの学派)の創設者の一人です。

16世紀のヨーロッパを専門とし、思考・心情を研究対象とする「心性史」を得意としました。

経歴

出生~学生時代
1878年

フランスのナンシーに生まれる。

父親はリセ(教育機関)の教師だった。

幼いころから歴史に興味を持ち、歴史学者を目指していた。

1897年

高等師範学校に入学する。

地理学者ポール・ヴィダル・ド・ラ・ブラーシュ(歴史学や社会学との協力を目指した人物)に出会うなど、のちのアナール学派創設の基礎が築かれる。

1902年

歴史学の教授資格試験に合格する。

1905年

歴史哲学者アンリ・ベールが主宰する『歴史総合論評』への寄稿を始める。

この『歴史総合論評』を通じて、社会学者のエミール・デュルケム、心理学者のアンリ・ヴァロン、地理学者のポル・ヴィダル・ド・ラ・ブラーシュ、経済学者のフランソワ・シミアンなどと交流がなされた。

1911年

歴史学の博士号を取得。

博士論文の『フェリペ2世とフランシュ・コンテ』は、それまでの政治史や軍事史の枠にとらわれない要素が組み込まれていた。

ディジョン大学・ストラスブール大学の教員時代
1912年

ディジョン大学の非常勤講師となる。

ブルゴーニュ地方の歴史・芸術史についての講義を担当した。

1914年

ディジョン大学の正教授となる。

1919年

ストラスブール大学の教授となる。

ここでマルク・ブロックと出会う。

1922年

『大地と人類の進化―歴史への地理学的序論―』を発表する。

1928年

『ある運命、マルティン・ルター』を発表する。

1929年

マルク・ブロックとともに『社会経済史年報』を創刊する。

これがアナール学派の始まりとなる。

『社会経済史年報』の編集委員には、歴史学者のアンドレ・ピガニヨル、ジョルジュ・エスピナス、アンリ・ピレンヌ、アンリ・オゼールの4人に加えて、社会学者のモーリス・アルヴァクス、経済学者のシャルル・リスト、政治学者のアンドレ・シーグフリート、地理学者のアルベール・ドマンジョンがいた。

コレージュ・ド・フランスの教員時代
1933年

コレージュ・ド・フランスの教授となる。

1942年

『16世紀における不信仰の問題―ラブレーの宗教』を発表する。

1944年

『エプタメロンをめぐって―聖なる愛と世俗の愛』を発表する。

晩年
1948年

高等研究院の第六部門の部長となる。

1956年

死亡する。

特徴

特徴

16世紀のヨーロッパを専門とし、思考・心情を研究する「心性史」を得意としました。

また仮説を立てて検証していく「問題史」の手法をとり、様々な学問の視点から歴史を研究しました。

当時としては珍しく「歴史は科学である」と考えていたことでも知られます。

影響を受けた歴史学者としては、ジュール・ミシュレやヤーコプ・ブルクハルトが挙げられます。

学問上の功績

アナール学派を創設し、歴史学の研究対象を拡大しました。

共同創業者のマルク・ブロックとともに、アナール学派の第一世代を牽引しました。

それまでの歴史学は政治史・外交史・軍事史の研究が大半で、ジャンルの偏りがありました。

アナール学派は地理学・経済学・社会学などを統合し、経済史・心性史・社会史などのジャンルを普及させました。

代表作

リュシアン・フェーヴルの代表作は?

代表作は『ある運命、マルティン・ルター』、『16世紀における不信仰の問題―ラブレーの宗教』、『エプタメロンをめぐって―聖なる愛と世俗の愛』などです。

いずれも心性史(人間の思考や心情に注目した歴史研究)に分類される作品です。

また地理学の視点を持つ『大地と人類の進化―歴史への地理学的序論―』も有名です。

大地と人類の進化―歴史への地理学的序論―

『大地と人類の進化―歴史への地理学的序論―』は、1922年に発表されたリュシアン・フェーヴルの作品です。

アンリ・ベール(フェーヴルが寄稿していた雑誌『歴史総合論評』の主宰者)の勧めで発表することになった作品で、歴史学と地理学の融合を目指した一冊です。

ある運命、マルティン・ルター

『ある運命、マルティン・ルター』は、1928年に発表されたリュシアン・フェーブルの作品です。

ドイツの宗教改革のきっかけを作ったマルティン・ルターを研究対象とし、さらに宗教改革下の16世紀ドイツを分析しました。

16世紀における不信仰の問題―ラブレーの宗教

『16世紀における不信仰の問題―ラブレーの宗教』は、1942年に発表されたリュシアン・フェーヴルの作品です。

「フランソワ・ラブレー(16世紀フランスの人文学者)は無神論者である」という説を否定し、16世紀の人々は神を信じていたと主張しました。

歴史学界における集合心性史の人気を高めた一冊です。

『エプタメロンをめぐって―聖なる愛と世俗の愛』

『エプタメロンをめぐって―聖なる愛と世俗の愛』は、1944年に発表されたリュシアン・フェーヴルの作品です。

『エプタメロン』(キリスト教徒のナヴァール王妃マルグリットが「世俗の愛」を書いた作品)を研究対象とし、16世紀における思想的な矛盾を指摘しました。

おわりに

リュシアン・フェーヴルは、当サイトの「有名な歴史学者7選」に選出されています。

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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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