『ヨーロッパ覇権以前』を書評【著者・内容・評価】

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目次

ヨーロッパ覇権以前とは

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『ヨーロッパ覇権以前』とは?

ヨーロッパ覇権以前は1989年に発表されたジャネット・リップマン・アブー・ルゴドの作品です。

13世紀頃のヨーロッパ・中東・アジアの交易システムを研究しました。

いわゆる「13世紀世界システム」についての重要な作品です。

著者

この本の著者は、アメリカの社会学者ジャネット・リップマン・アブー・ルゴドです。

都市社会学や都市史を得意とする人物です。

代表作は『ヨーロッパ覇権以前』です。

目次

本書の目次は以下の通りです。

序論

 第1章 システム形成への問い

第1部 ヨーロッパ・サブシステム

 古き帝国からの出現

 第2章 シャンパーニュ大市の諸都市

 第3章 ブリュージュとヘント―フランドルの商工業都市

 第4章 ジェノヴァとヴェネツィアの海洋商人たち

第2部 中東心臓部

 東洋への3つのルート

 第5章 モンゴルと北方の道

 第6章 シンドバードの道―バグダードとペルシア湾

 第7章 マムルーク朝政権下のカイロの独占

第3部 アジア

 インド洋システム―その3つの部分

 第8章 インド亜大陸―すべての地に通じる道

 第9章 海峡と瀬戸

 第10章 絹の中国

結論

 第11章 13世紀世界システムの再構成

内容

13世紀の世界経済

13世紀には、ヨーロッパ・中東・アジアをつなぐ世界的な交易システムが存在していました。

本書は、その13世紀の世界経済を網羅的に解説していきます。

13世紀のヨーロッパ経済

第1部では、13世紀のヨーロッパ経済を解説しています。

ここでは以下の3つの内容を扱っています。

  • シャンパーニュの大市(フランス)
  • ブリュージュとヘントの商工業(ベルギー)
  • ヴェネツィアとジェノヴァの商業(イタリア)

第1部を通して、13世紀の世界経済におけるヨーロッパの立ち位置を理解できます。

13世紀の中東経済

第2部では、13世紀の中東経済を解説しています。

中東は、ヨーロッパと東アジアをつなぐ要地であり、以下の3つの交易ルートの拠点となりました。

  • 北方ルート(西アジア→中央アジア→東アジア)
  • 中央ルート(西アジア→ペルシア湾→インド洋)
  • 南方ルート(エジプト→紅海→インド洋)

第2部を通して、13世紀の世界経済における中東の立ち位置を理解できます。

13世紀のアジア経済

第3部では、13世紀のアジア経済を解説しています。

ここでは以下の3つの地域を扱っています。

  • インド亜大陸
  • 東南アジア諸国
  • 中国

第3部を通して、13世紀の世界経済におけるアジアの立ち位置を理解できます。

世界システム論の研究における立ち位置

世界システム論とは

世界システム論とは、世界経済を一つのシステムとして捉えて分析するものです。

一国単位の分析ではなく、各地域の関係性を分析していきます。

世界システム論への影響

『近代世界システム』(1974年発表の世界システム論を提唱した作品)では、近代ヨーロッパで資本主義経済が成立したと考え、15世紀以降を研究対象としました。

一方で『ヨーロッパ覇権以前』は、13世紀にも世界的な交易システムが存在したことを主張し、また中東やアジアの存在感が大きかったことを示唆しました。

『ヨーロッパ覇権以前』は近代ヨーロッパに偏りがちだった世界システム論研究の視野を広げ、世界システムにおけるアジアの重要性を指摘した『リオリエント』などの作品が誕生する土台をつくりました。

評価

総合評価

ヨーロッパ覇権以前
総合評価
( 4 )
メリット
  • 13世紀の世界経済を深く理解できる
  • 文章がわかりやすい
デメリット
  • 地名・王朝名などの背景知識が必要である

13世紀の世界経済を解説した作品です。

13世紀のヨーロッパ・中東・アジアの経済の特徴と結びつきがまとめられています。

地名・王朝名などの背景知識がないと理解しにくいところもありますが、文章自体はわかりやすくて読みやすいです。

経済史を学びたい人におすすめ

本書は、経済史を学びたい人におすすめの作品です。

13世紀は中世経済の最盛期であり、本書は前近代の世界経済史の理解にとても役立ちます。

経済に興味がある人は、ぜひ本書を読んでみてください。

世界システム論の必読書

本書は、世界システム論における前近代アジアの重要性を主張した功績があります。

この分野は近代ヨーロッパ経済が中心となっていましたが、本書の発表以降はアジアの重要性を説く作品が増えました。

世界システム論を深く勉強したい人も、本書を読んでおくのがおすすめです。


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おわりに

本記事では『ヨーロッパ覇権以前』を書評しました。

noteでは、13世紀の経済はもちろん、古代~現代の世界経済史を解説したシリーズもございます。

経済史を勉強したい方は、こちらのnoteもおすすめです↓

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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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