【保存版】ナショナリズム・国民国家をわかりやすく解説

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目次

ナショナリズム・国民国家とは

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ナショナリズムとは

ナショナリズムとは?【簡単に】

ナショナリズムとは、国民(文化的に同質な人々の集団)を重視する思想・運動のことです。

独立した国民国家を形成しようとする思想・運動と定義されることもあります。

またアーネスト・ゲルナーによる「政治的な単位と民族的な単位とが一致しなければならない主張する一つの政治的原理」¹というナショナリズムの定義もよく引用されます。

国民国家とは

国民国家とは?【簡単に】

国民国家とは、国民によって構成されている国家です。

ちなみに「国民=文化的に同質な人々の集団」で、「国家=ある領域を支配する中央集権的な政治体」です。

ナショナリズム・国民国家のはじまり

いつ、どこで始まった?

ナショナリズムはいつ、どこで始まった?

近代主義の立場では、18世紀後半~19世紀のアメリカ大陸や西ヨーロッパが最初の事例だとされています。

しかし、これより前にナショナリズムが成立していたという主張もあります。(反近代主義)

以下では、ナショナリズムの成立時期についての4つの説を解説します。

立場①近代主義

近代主義とは、近代にナショナリズムが成立したとする立場です。

ナショナリズム研究が注目されるようになった1980年代から存在する立場で、かつては圧倒的に主流派でした。

代表的な研究者は、J・ブルイリー、E・ゲルナー、B・アンダーソン、E・ホブズボームなどです。

立場②エスノシンボリズム

エスノシンボリズムとは、近代にナショナリズムが成立したことは認めつつも、近代以前にそのルーツがあるとする立場です。

古来から存在する共同体「エトニ」に注目するなど、近代以前の社会も研究対象としていきます。

広義には反近代主義にあたる立場です。

代表的な研究者は、A・D・スミス、J・ハッチンソンなどです。

立場③前近代主義

前近代主義とは、近代以前にナショナリズムが成立したとする立場です。

この立場では、中世にナショナリズムが成立したとする説や、近世にナショナリズムが成立したとする説があります。

広義には反近代主義にあたる立場です。

代表的な研究者は、A・ヘイスティング、J・R・ロベラ、L・グリーンフェルドなどです。

立場④原初主義

原初主義とは、ナショナリズムは作られたものではなく、普遍的なものであるとする立場です。

かつてはあまり支持されませんでしたが、2000年頃から見直されつつあります。

広義には反近代主義にあたる立場です。

代表的な研究者は、S・グロスビー、F・J・ギル・ホワイトなどです。

【どちらが人気?】近代主義vs反近代主義

かつては近代主義が大きく支持されていました。

しかし1990年代中盤ころから、依然として近代主義が強いものの、反近代主義の支持も高まりました。

また2000年頃には、ナショナリズムの成立時期を考察することの重要性の低さを指摘し、この論争から脱却する動きもみられるようになりました。

注目すべきナショナリズムの事例7選

フランス

フランスでは、かなり初期に国民国家が成立しました。

最初の頃は民族的な統一性が弱かったものの、理念によって国を統合したといわれます。

ドイツ

ドイツでは、フランスから少し遅れて国民国家が成立しました。

早いうちにドイツ語圏が形成されており、国民国家が成立する前から民族的な統一感がありました。

ただしドイツやオーストリアなど複数の国家に分裂し、ドイツ語圏全体での統一は達成されませんでした。

ロシア

ロシアでは、100以上の民族からなるロシア帝国をルーツに持ち、ソビエト連邦という独自の体制が試されました。

ウクライナ人やベラルーシ人など東スラブ系民族との関係が複雑で、他国との民族問題もあります。

アメリカ

アメリカは、フランスと並んでかなり初期に国民国家が成立した地域です。

民族的な多様性がとても大きく、人種や民族の問題を抱えています。

ユーゴスラヴィア

ユーゴスラヴィアは、複数の南スラブ系の民族によって構成された国家です。

民族同士の殺し合いなどトラブルが多く、現在はセルビア、クロアチア、スロヴェニアなど7国に分裂しています。

アラブ

アラブは、20ほどの国が存在していながら、アラブ人としての仲間意識もみられる地域です。

ユダヤ人の国家であるイスラエルとの関係も問題となっています。

日本

日本は、非欧米諸国としてはかなり早い時期に国民国家を成立させました。

世間では「島国」や「単一民族国家」と言われ、古から国が統合されていたと思われがちですが、近代以前の地域間の分断が指摘されることもあります。

おすすめ本

ナショナリズム・国民国家のおすすめ本は?

B・アンダーソン『想像の共同体』、E・ゲルナー『民族とナショナリズム』、A・D・スミス『ネイションとエスニシティ』がおすすめです。

いずれもナショナリズム研究における定番書です。

この3冊を読むだけでも、ナショナリズムの理解はかなり深まります。

想像の共同体

『想像の共同体』は、1983年に発表されたベネディクト・アンダーソンの作品です。

近代にナショナリズムが成立したとする「近代主義」の立場をとります。

出版資本主義とナショナリズムの関係を分析しつつ、ナショナリズムを4種類に分類しているところも特徴的です。

最も定番的なナショナリズムの書籍であり、とりあえず1冊目に読んでおいて間違いないでしょう。

民族とナショナリズム

『民族とナショナリズム』は1983年に発表されたアーネスト・ゲルナーの作品です。

近代にナショナリズムが成立したとする「近代主義」の立場をとります。

産業化がナショナリズムの成立における主要因と考えており、学校教育についての記述が多いのも特徴です。

こちらも非常に有名な作品で、前述の『想像の共同体』と比較しながら読んでみるのがおすすめです。

ネイションとエスニシティ

『ネイションとエスニシティ』は1986年に発表されたアントニー・D・スミスの作品です。

近代以前にナショナリズムのルーツがあるとする「エスノシンボリズム」の立場をとります。

古代・中世から存在する共同体である「エトニ」に注目し、近代の国民国家がもつ過去との連続性について論じました。

こちらもナショナリズムの定番書であり、近代主義に偏らないために読んでおきたい一冊です。

おわりに

以下の記事では、歴史学をまとめて解説しています。

歴史学の基本をざっくり学びたい方は、こちらの記事もおすすめです。


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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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