【大好評】歴史学の基本を5分で学べる無料記事はこちら↓
『民族とナショナリズム』とは
![](https://yuto-ueshima.com/wp-content/uploads/2023/10/Nation-and-Nationalism-1024x576.png)
必読レベル | |
難易度 |
前提知識:ナショナリズムとは
ナショナリズムとは、国民(文化的に同質な人々の集団)を重視する思想・運動のことです。
独立した国民国家を形成しようとする思想・運動と定義されることもあります。
著者
この本の著者は、ユダヤ人の哲学者・社会人類学者アーネスト・ゲルナーです。
哲学・政治社会学・思想史・社会人類学などの幅広い知見を持ち、様々なジャンルの作品を遺した人物です。
代表作は『民族とナショナリズム』です。
内容
ナショナリズムの原因は「産業化」
本書の前半では、社会の産業化によってナショナリズムが生まれたと主張されます。
産業化された社会の特徴は以下の3つです。
- 読み書き・計算・技術が重要となる
- 人が流動的で、さまざまな職業に配置される
- 大規模な学校教育が実施される
社会が産業化されることで、ナショナリズムが成立する基礎が築かれたとされます。
3種類のナショナリズム
本書の後半では、ナショナリズムが3種類に分類されます。
- 西欧的ナショナリズム・・・高身分と低身分ともに教育レベルが高い
- 東欧的ナショナリズム・・・高身分の教育レベルが高く、低身分の教育レベルが低い
- ディアスポラ・ナショナリズム・・・高身分の教育レベルが低く、低身分の教育レベルが高い
各階級の教育レベルの違いにより、ナショナリズムの形態が異なることが主張されます。
少し単純すぎる区分でしょうが、簡潔でわかりやすいところは評価できます。
ナショナリズム研究における立ち位置
ナショナリズム研究の土台を作った
本書は1983年に発表され、ナショナリズムを明快に論じた作品として高く評価されました。
そして同年に発表された『想像の共同体』とともに、ナショナリズム研究が勢いづくきっかけを作りました。
これ以降、数多くのナショナリズムを研究した著作が発表されていきました。
評価
![](https://yuto-ueshima.com/wp-content/uploads/2023/10/Nation-and-Nationalism.png)
- ナショナリズムの成立についての鋭い視点が得られる
- ページ数が少なく、挑戦しやすい
- 理論的な考察が中心で、歴史的な実例はあまり扱っていない
ナショナリズムの成立について論じた作品です。
ナショナリズム研究の重要文献であり、現在でも広く読まれています。
約240ぺージと短く、背景知識もそこまで必要ないので、古典作品ながら挑戦しやすいでしょう。
ただし理論的な考察が中心となっており、歴史的な実例があまり紹介されていないため、少し綺麗にまとまりすぎている印象もあります。
ナショナリズムの入門におすすめ
本書はナショナリズムの入門におすすめです。
古典ながらもページ数が少なく、議論もシンプルです。
この分野に興味がある人は、本書から入ってみるのも良いでしょう。
『想像の共同体』『ネイションとエスニシティ』とあわせて読むのも◎
本書は、『想像の共同体』や『ネイションとエスニシティ』などのナショナリズム研究書とも相性が良いです。
これらの書籍をあわせて読み、さらにナショナリズムへの理解を深めるのもおすすめです。
![](https://yuto-ueshima.com/wp-content/uploads/2023/02/Imagined-Communities-300x169.png)
![](https://yuto-ueshima.com/wp-content/uploads/2023/09/The-Ethnic-Origins-of-Nations-300x169.png)
『民族とナショナリズム』の日本語版をAmazonで確認する
おわりに
以下の記事では、歴史学をまとめて解説しています。
歴史学の基本をざっくり学びたい方は、こちらの記事もおすすめです。