『地中海』を書評【著者・内容・評価】

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目次

『地中海』とは

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『地中海』とは?

『地中海』は、1949年に出版されたフェルナン・ブローデルの著作です。

複数の学問の視点から、フェリペ2世時代のスペインを中心とする16世紀の地中海を研究しました。

正式タイトルは『フェリペ2世時代の地中海と地中海世界』です。

背景知識:地中海はどこ?

地中海は、ユーラシア大陸とアフリカ大陸の間にある海です。

16世紀の地中海周辺の有力地域としては、スペイン・ポルトガル・フランス・北イタリア・オスマン帝国などが知られています。

著者

この本の著者は、フランスの歴史学者フェルナン・ブローデルです。

20世紀を代表する歴史学者で、複数の学問分野を統合した総合的な歴史研究を得意としています。

代表作は『地中海』、『物質文明・経済・資本主義』などです。

内容

地中海を三層構造で分析

本書は、地中海を三層構造で分析していきます。

三層構造とは、歴史を短期波動・中期波動・長期波動でとらえる考え方です。

  • 短期波動・・・短期的な事件      →地中海の出来事
  • 中期波動・・・中期的な社会状況    →地中海の経済・社会
  • 長期波動・・・長期的に持続する構造  →地中海の地理・環境

この短期波動・中期波動・長期波動を個別に論じることで、地中海を多角的に分析していきます。

絶妙な時代「16世紀」

本書は、16世紀の地中海を研究していきます。

この16世紀は、地中海が繁栄した時代であり、以下のような事象が知られています。

  • スペイン・ポルトガル・イタリア諸都市などの地中海諸国が経済の最盛期を迎えた。(中期波動)
  • スペインの最盛期と言われるフェリペ2世の治世がある。(短期波動)
  • オスマン帝国の最盛期と言われるスレイマン1世の治世がある。(短期波動)

この「地中海の最盛期」ともいえる時代を研究対象とすることで、質の高い内容を実現しています。

評価

総合評価

地中海
総合評価
( 5 )
メリット
  • 歴史学の幅広い研究に網羅的に触れることができる
  • フェリペ2世時代のスペインを深く理解できる
デメリット
  • ボリュームが多い。(約400ページ×5冊)

地理・経済・社会・事件など複数の視点から、フェリペ2世時代のスペインを中心に16世紀の地中海を分析した作品です。

幅広い研究がなされており、歴史学でよくある研究の視点が網羅されています。

いわゆる「三層構造」(※「内容」の章で解説)が用いられており、筆者の個性が感じられる構成となっています。

知名度は非常に高く、歴史学の必読書とされることも多いです。

歴史学を本気で勉強したい人におすすめ

古典として読み継がれているだけあって、内容の充実度はかなり高いです。

幅広い分野の視点から分析されているため、歴史学のものの見方を一通り体験できます。

初学者には少し難しいかもしれませんが、歴史学を本気で勉強したい人におすすめの作品です。

ボリュームが多すぎて挫折しやすい

本書は、歴史学の本のなかで最上位のページ数の多さです。(約400ページ×5冊)

また地名や人名がたくさん出てくるため、背景知識がないと読みにくいかもしれません。

量・質ともにレベルが高く、挫折しやすい作品となっています。


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おわりに

本書は、当サイトの「歴史学のおすすめ本7選」に選出されています。

歴史学の代表的な作品に興味がある方は、こちらの記事もおすすめです。


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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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