『チーズとうじ虫』を書評【著者・内容・評価】

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目次

『チーズとうじ虫』とは

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『チーズとうじ虫』とは?

『チーズとうじ虫』は1976年に発表されたカルロ・ギンズブルグの作品です。

あるイタリアの一般人を研究した作品で、ミクロストリア(とても狭い範囲を研究していく歴史学の方法)を代表する名著です。

背景知識:ミクロストリアとは

ミクロストリアとは、とても狭い範囲を研究していく歴史学の方法です。

ひとつの村、ひとりの人間など、かなり限られた範囲を研究していきます。

研究範囲を小さく限定することで、独自の視点から歴史を分析することができます。

著者

この本の著者は、イタリアの歴史学者カルロ・ギンズブルグ(1939-)です。

ギンズブルグはミクロストリア(とても狭い範囲を研究していく歴史学の方法)を得意とする人物です。

代表作は『チーズとうじ虫』、『夜の合戦』、『ピエロ・デッラ・フランチェスカの謎』などです。

目次

本書の目次は以下の通りです。

1 メノッキオ
2 村
3 最初の審問
4 「悪魔に憑かれている」
5 コンコルディアからポルトグルアロへ
6 「高貴な身分の方々にあえて申し上げます」
7 古いものを残した社会
8 「かれらは貧しいものからむさぼり取る」
9 「ルター派」と再洗礼派
10 粉挽屋、絵師、道化
11 「これらの見解を、私は自分の脳味噌からひき出したのです」
12 書物
13 村の読者たち
14 印刷された頁と「空想的な見解」
15 行き止り
16 処女たちの神殿
17 聖母の葬儀
18 キリストの父
19 最後の審判の日
20 マンドヴィルの旅行記
21 ピグミーと人食い人種
22 「自然の神」
23 三つの指輪
24 書字の文化と口頭伝承の文化
25 カオス
26 対話
27 神話的なチーズ、現実のチーズ
28 知の独占
29 『聖書の略述記』の言葉
30 比喩の機能
31 「主人」、「貨幣」、「労働者」
32 ひとつの仮説
33 農民の宗教
34 魂
35 「わかりません」
36 二つの精神
37 ある観念の軌跡
38 矛盾
39 天国
40 ある新しい「生き方」
41 「司祭を殺すこと」
42 「新世界」
43 審問の終了
44 裁判官への手紙
45 レトリックの彩
46 最初の判決
47 牢獄
48 故郷への帰還
49 告発
50 ユダヤ人との夜の対話
51 二度目の裁判
52 「空想」
53 「虚栄と夢想」
54 「ああ、偉大な、全能の、聖なる神よ」
55 「もし十五年前に死んでいられたら」
56 二度目の裁判の判決
57 拷問
58 スコリオ
59 ペレグリノ・バロニ
60 二人の粉挽屋
61 支配者の文化と従属階級の文化
62 ローマからの書簡

内容

とあるイタリアの粉挽屋を研究

本書の研究対象は、16世紀イタリアの粉挽屋であるメノッキオ(本名:ドメニコ・スカンデッラ)という人物です。

メノッキオはキリスト教徒ながら、独自の宗教観を持っていました。

メノッキオが異端審問(キリスト教の裁判)にかけられる様子を描きつつ、メノッキオの宗教観が生まれた背景を分析していきます。

16世紀イタリアの文化がみえてくる

メノッキオという一人の人間を研究することで、最終的には16世紀イタリアの文化がみえてきます。

メノッキオの独自の宗教観の背景にある、16世紀イタリアの文化的状況が明らかになっていきます。

評価

総合評価

チーズをうじ虫
総合評価
( 4 )
メリット
  • ミクロストリアを体験できる
  • ストーリーがあり、小説のように楽しめる
  • ページ数が少ない

メノッキオ(16世紀イタリアのフリウリ地方で粉挽屋をしていた人物)について研究した作品です。

ごく限られた範囲を研究するミクロストリアの作品としては、とても有名な一冊です。

ページ数も少ない(約250ページ)ので、気軽に挑戦しやすいのも良いところです。

また歴史学の作品ながら、小説のようなストーリーを楽しむこともできます。

次々と謎が明らかになっていくミステリー小説のような展開は魅力的で、また終盤の展開には驚かされます。

ミクロストリアの入門としておすすめ

本書はミクロストリアの代表作でありながら、平易で読みやすい作品となっています。

背景知識もあまり必要ないため、ミクロストリアの最初の一冊としておすすめです。

まだミクロストリアの作品を経験していない人は、ぜひ本書を読んでみてください。


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おわりに

本書は、当サイトの「歴史学のおすすめ本7選」に選出されています。

歴史学の代表的な作品に興味がある方は、こちらの記事もおすすめです。


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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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