『疫病と世界史』を書評【著者・内容・評価】

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目次

『疫病と世界史』とは

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『疫病と世界史』とは?

『疫病と世界史』は1976年に発表されたウィリアム・ハーディー・マクニールの作品です。

原始時代~20世紀までの疫病を研究し、疫病が歴史に与えてきた影響について論じました。

疫病史研究の古典であり、現在の歴史学界でも広く読まれています。

著者

この本の著者は、アメリカの歴史学者ウィリアム・ハーディー・マクニール(1917-2016)です。

マクニールは、あらゆる地域・時代を扱った大きなスケールの研究を得意とする人物です。

代表作は『西洋の勃興』、『疫病と世界史』、『力の追求』などです。

目次

本書の目次は以下の通りです。

第一章 狩猟者としての人類

第二章 歴史時代へ

第三章 ユーラシア大陸における疾病常生地としての各文明圏の間の交流

第四章 モンゴル帝国勃興の影響による疾病バランスの激変

第五章 大洋を越えての疾病交換

第六章 紀元一七〇〇年以降の医学と医療組織がもたらした生態的影響


〔第一章〕は、人類が狩猟採集民だった当初の感染症について論じています。

〔第二章〕は、文明化に伴う疫病の発生について論じています。

〔第三章〕は、ユーラシア大陸の各文明圏が疫病への免疫を獲得するまでを論じています。

〔第四章〕は、モンゴル帝国の台頭によるユーラシア大陸でのペストの流行について論じています。

〔第五章〕は、ヨーロッパ人のアメリカ大陸進出と疫病について論じています。

〔第六章〕は、1700年以降の疫病の克服について論じています。

内容

原始時代~20世紀の疫病

本書は、原始時代~20世紀の疫病をまとめて解説しています。

章ごとに扱っている時代・地域は以下の通りです。

第一章→アフリカ(狩猟採集の時代)

第二章→全世界(農耕牧畜の開始-)

第三章→古代オリエント・中国・インド・古代ギリシャ・古代ローマなど(B.C.500-1200)

第四章→ヨーロッパ・エジプト・バルカン諸国・インド・中国など(1200-1500)

第五章→南北アメリカ・ヨーロッパ・アフリカ・アジアなど(1500-1700)

第六章→ヨーロッパなど(1700-)

疫病のサイクル

本書では、以下のような疫病のサイクルが想定されています。(本書で明言されてはいませんが、各章の展開がそうなっています。)

病原体が誕生・伝来する

新たな病原体が誕生する。

もしくは他の場所から病原体が伝来する。

疫病が発生する

未知の病原体が蔓延し、疫病が発生する。

この段階では致死率が高いケースも多く、大規模な被害をもたらすこともある。

免疫を獲得する

疫病が広まるごとに、免疫を獲得する人々が増えていく。

こうして疫病の危険度が下がる。

収束する

疫病による死者が減少し、社会が疫病に適応する。

こうして病原体と共存できるようになる。


そして本書は「その病原体はどこから伝来したのか」「その疫病はどれくらいの被害をもたらしたのか」「その病原体への免疫を獲得した時期はいつか」などを論点として、議論を展開していきます。

評価

総合評価

疫病と世界史
総合評価
( 4.5 )
メリット
  • 原始時代~20世紀までの疫病を網羅的に理解できる
  • コンパクトにまとまっている
  • 内容がわかりやすい

歴史上のあらゆる疫病が一冊にまとめられています。

原始時代~20世紀にかけてのヨーロッパ・アフリカ・アジア・南北アメリカを研究対象としており、研究範囲はかなり広いです。

「各疫病の発生原因」「疫病が社会に与えた影響」「医学の発達」など、複数の項目が分析されている点も高評価です。

疫病史の古典としての地位を確立しており、現在でも広く読まれています。

そして内容が充実しているにもかかわらず、コンパクトで読みやすいです。(およそ500ページ弱)

背景知識も必要ないので、歴史学の初学者でも楽しめるでしょう。

疫病史の入門におすすめ

本書は、疫病史の入門書として優れた作品です。

情報量と読みやすさのバランスがよく、万人におすすめできます。

疫病史に興味がある場合は、とりあえず本書を選ぶと失敗がないでしょう。


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おわりに

本書は、当サイトの「歴史学のおすすめ本7選」に選出されています。

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この記事を書いた人

■慶應義塾大学文学部日本史学専攻卒
■歴史学の本を年間100冊以上読む

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