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『歴史とは何か』とは
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- 『歴史とは何か』とは?
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『歴史とは何か』は1961年に発表されたエドワード・ハレット・カーの作品です。
歴史がどのような学問なのかを解説しており、歴史学の入門書として高く評価されています。
著者
この本の著者は、イギリスの歴史家エドワード・ハレット・カー(1892-1982)です。
カーは元外交官で、国際政治学やソビエト・ロシア史を得意とする人物です。
代表作は『危機の二十年』『ソヴェト・ロシア史』『歴史とは何か』などです。
旧版・新版の比較
日本語版の『歴史とは何か』には、旧版(1962年出版)と新版(2022年出版)があります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
・1962年出版
・コンパクトな新書サイズ
・清水幾太郎による翻訳(個人的には旧版の方が読みにくい)
・値段が安い(860円+税)
・2022年出版
・E.H.カーの遺稿や自叙伝が追加されており、旧版より情報量が多い
・近藤和彦による翻訳(個人的には新版の方が読みやすい)
・値段が高い(2400円+税)
個人的には新版がおすすめです。
読みやすくて情報量も多いため、新版の方が満足度は高いと思います。
しかし価格とサイズ感においては旧版の方が優れています。
「とにかくコンパクトで安いものがいい」「多少は読みにくくてもOK」という人は旧版を検討してみてください。
目次
本書の目次は以下の通りです。(2022年版)
第1講 歴史家とその事実
第2講 社会と個人
第3講 歴史・科学・倫理
第4講 歴史における因果連関
第5講 進歩としての歴史
第6講 地平の広がり
〔第1講〕~〔第5講〕ではそれぞれ異なる具体的な議論を行い、歴史学の性質を明らかにしていきます。
〔第6講〕は本書の内容を総括し、歴史の現在と未来を論じています。
『歴史とは何か』の読み方【要約レポート対応】
ここでは本書の読み方を指南していきます。
本書の要約レポートを課されている大学生の方にも参考になるように意識して構成しました。
すでに本書を読み終わった方は、内容の整理としてご活用ください。
前提知識
まずは前提知識を整理していきましょう。
本書は18~20世紀の史学史(歴史研究の歴史)の事項がよく出てきます。
そのため史学史の流れを押さえておくと読みやすくなります。
以下に、18~20世紀のおおまかな史学史をまとめました。
かなり簡略化していますが、ざっくりこんな感じです。
本書は20世紀(1961年)の書籍なので、進歩史観に陥ることもなく、実証主義史学を絶対視することもありません。
「18・19世紀の歴史学者の考えを否定する→筆者の意見」という論理展開も多いので、意識しておくとよいでしょう。
章ごとの論点
第1講 歴史家とその事実
この章では「歴史は主観的か客観的か」が議論されます。
19世紀は、実証主義史学が影響力が強く、「完全に客観的な歴史」が目指されることもありました。
20世紀は、実証主義史学が土台となりつつも部分的な修正を受ける時代であり、「完全に客観的な歴史」の存在はやや疑問視される傾向にあります。
このあたりを押さえておくと、読み間違えにくいでしょう。
第2講 社会と個人
この章では「歴史における社会と個人の関係性」について論じています。
現代の歴史学において「○○という偉人の影響で歴史が変わった」みたいな極論は受け入れられにくく、やはり社会の影響は無視できないところです。
社会と個人を対立関係でとらえないように注意すると、読み間違えにくい章だと思います。
第3講 歴史・科学・倫理
この章では「歴史は科学なのか」と「歴史上の出来事に道徳的な判断をしてもよいのか」について議論されます。
19世紀の実証主義史学は歴史を科学にするために成立しており、カーもこの功績をそれなりに認めている印象です。
アメリカの歴史学者リン・ハントは「歴史は文学である」みたいなことを主張していますが、カーはこういった主張はしていません。
第4講 歴史における因果連関
この章では「歴史の因果関係」について論じています。
20世紀には経済・地理・心性などを対象とする研究も活発になり、いろいろな因果関係が生み出されました。
ただし因果関係をたくさん発見すればいいわけではなく、その質も重要になります。
やや難しいかもしれませんが、丁寧に読み進めていきましょう。
第5講 進歩としての歴史
この章では「歴史における進歩」について論じています。
20世紀には、すでに進歩史観(歴史はある目標に向かって進歩するという考え)が否定されるようになってきていました。
とはいえ「すべての文明は滅亡する」という悲観論を支持するわけではなく、「歴史に意味はない」という虚無的な態度をとるわけでもありません。
このような極端な結論にはならないので、そこを意識しておくと読み間違えにくいでしょう。
第6講 地平の広がり
この章では「歴史の現在と未来」について論じています。
前章と関連があるので、前章の内容をしっかり押さえてから読むのがおすすめです。
現在の問題点に触れつつも、未来に対して一定の楽観性を表しています。
評価
総合評価
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- 歴史学の性質について深く議論されている
- わずか6章でコンパクト
- 議論のレベルがやや高く、何度か読みなおす場合もある
タイトルの通り「歴史とは何か」について論じた歴史哲学書となっています。
わずか6章のコンパクトな構成ながら、歴史学の本質を明確にまとめています。
出版から50年以上経過していますが、現在でも歴史哲学の定番書として広く読まれています。
ただし内容はやや複雑なので、繰り返し読む必要があるかもしれません。
歴史学の初学者におすすめ
本書は、歴史学の入門書として非常に有用です。
実際に入門書として大学での教育に使用されることもあります。(自分も大学時代に読みました。)
品質、入手しやすさ、価格、分量のバランスがよく、万人におすすめできる作品です。
歴史学を本格的に勉強したいと思っているものの、どの本を読むべきか迷っているならば、ぜひ本書を手に取ってみてください。
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おわりに
本書は、当サイトの「歴史学のおすすめ本7選」に選出されています。
歴史学の代表的な作品に興味がある方は、こちらの記事もおすすめです。
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