歴史学とは
- 歴史学とは?
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歴史学とは、過去の政治、経済、文化、心性、社会などを研究する学問です。
過去の文献史料から歴史的事実を解明し、過去を論理的に推察していきます。
ただし研究範囲・手法は拡大しており、他の学問分野にまたがった研究も少なくありません。
西洋史学・東洋史学・日本史学とは
- 西洋史学・東洋史学・日本史学の違いは?
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西洋史学は主にヨーロッパの歴史を研究します。
東洋史学は主にアジアの歴史を研究します。
日本史学は主に日本の歴史を研究します。
大学の歴史学科では、西洋史学・東洋史学・日本史学に専攻が分かれるのが一般的です。
代表的な歴史学者
- 歴史学の代表的な研究者といえば?
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19世紀ドイツの歴史学者レオポルト・フォン・ランケが最も有名でしょう。
ランケは歴史学の創始者であり、「近代歴史学の父」と呼ばれる人物です。
現在の歴史学もランケの研究手法がベースになっており、その功績は非常に大きいです。
それ以外には文化史の大家であるヨハン・ホイジンガ、アナール学派の代表的人物であるフェルナン・ブローデルなども有名です。
代表的な歴史学者については、以下の記事でくわしく解説しています↓
代表的な歴史学の本
- 歴史学の代表的な本といえば?
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F.ブローデル『地中海』、I.ウォーラーステイン『近代世界システム』の名前がよく挙がります。
これらの作品は発表から50年ほど経過しているものの、現在も高く評価されています。
また入門書としては、E.H.カー『歴史とは何か』が薦められることが多いです。
歴史学の有名な本については、以下の記事でくわしく解説しています↓
【19世紀~21世紀】史学史まとめ
- 史学史とは?
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史学史とは、歴史研究の歴史です。
過去~現在における歴史研究の流れを知ることができます。
広義には紀元前5世紀(ヘロドトスによる歴史叙述の開始)からを範囲としますが、19世紀(ランケによる歴史学の成立)からを範囲とすることもあります。
当サイトは歴史学を専門としているので、19世紀以降を史学史として扱っています。
以下では、史学史をまとめて解説しています。
19世紀―歴史学の成立
19世紀前半、ドイツの歴史学者レオポルト・フォン・ランケによって歴史学が成立します。
1824年、ランケは『ローマ的・ゲルマン的諸民族史』と『近世歴史家批判』を発表し、歴史的事実を客観的に叙述する研究手法を提示します。
この研究手法は実証主義史学といわれ、歴史学の最もスタンダードな手法となります。
19世紀―文化史学の成立
19世紀後半、スイスの歴史学者ヤーコプ・ブルクハルトの文化史学が注目を集めました。
特に1860年に発表された『イタリア・ルネサンスの文化』は有名で、ルネサンスという言葉を一般に普及させました。
文化史学は、ランケほどの正確性・客観性は担保できないものの、広い視野で文化を研究できる特徴がありました。
文化史学は主流派にはなりませんでしたが、ランケの弱点を補うものとして注目されました。
20世紀―20世紀初頭の巨匠たち
20世紀になると、注目するべき歴史学者がいくつか現れます。
ベルギーの歴史学者アンリ・ピレンヌは、中世ヨーロッパの社会経済史を得意とし、ピレンヌ・テーゼ(中世ヨーロッパの始まりをイスラームの台頭と関連させる説)を提唱して大きな論争を生みました。
オランダの歴史学者ヨハン・ホイジンガは、中世ヨーロッパの文化史を得意とし、文化史の名作『中世の秋』や遊びを研究した『ホモ・ルーデンス』などの作品を遺しました。
これらの人物は歴史学の発展に貢献しており、現在でも名前が知られています。
20世紀―アナール学派の成立
20世紀前半、アナール学派が成立しました。
創設者は、フランスの歴史学者であるリュシアン・フェーヴルとマルク・ブロックです。
この学派は、地理学・経済学・社会学・言語学・人類学・心理学などを歴史研究に統合させ、研究範囲が狭いランケ史学の弱点を克服しました。
特に第二世代のフェルナン・ブローデルの功績が大きく、代表作の『地中海』は歴史学の必読書とされることも多いです。
20世紀―歴史哲学の成熟
1961年、イギリスの歴史学者エドワード・ハレット・カーは『歴史とは何か』を発表します。
これは歴史哲学(歴史学のあり方を考察する分野)の作品で、「歴史とは何か」を複数の視点から考察しました。
本書は歴史哲学の決定版ともいえる作品であり、現在でも歴史学の入門書として広く読まれています。
20世紀―世界システム論の提唱
1974年、アメリカの社会学者イマニュエル・ウォーラーステインによって世界システム論が提唱されます。
これは世界経済を中核・半周辺・周辺の3エリアからなる1つのシステムとして捉えるもので、『近代世界システム』という作品のなかで提唱されました。
これは経済史の研究に大きな影響を与えました。
また13世紀の世界システムを扱った『ヨーロッパ覇権以前』もこの分野の重要文献として知られています。
20世紀―感染症の研究
1970年代になると、感染症に注目した歴史研究が人気を集めます。
1972年、アルフレッド・クロスビーの『コロンブスの交換―1492年の生物学的、文化的帰結』が発表されます。
1976年、ウィリアム・ハーディー・マクニールの『疫病と世界史』が発表されます。
これ以降、生態系や環境要因に注目した研究が次々と発表されていきます。
20世紀―ミクロストリアの誕生
1980年代になると、とても狭い範囲を研究するミクロストリアが注目を集めていきます。
特にカルロ・ギンズブルグの『チーズとうじ虫』の評価が高く、この分野の代表作として知られています。
20世紀―ポストコロニアリズム
1980年代には、植民地主義を批判的に分析するポストコロニアリズムの潮流が生まれます。
この現象は、エドワード・サイードの『オリエンタリズム』という作品をきっかけに始まりました。
これ以降、アジアやアフリカの視点も重視され、ヨーロッパ中心主義的な主張は警戒されるようになります。
20世紀―ナショナリズムの研究
1980年代に、国民や民族などを対象とするナショナリズムの研究が活発になっていきます。
1983年に発表されたベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』とアーネスト・ゲルナーの『民族とナショナリズム』の存在感が大きく、現在でも定番書となっています。
また1986年に発表された『ネイションとエスニシティ』は、上記2冊とは異なって古代・中世の社会にも注目し、この分野の重要文献となりました。
20世紀―グローバルヒストリーの台頭
1990年代になると、社会主義国の崩壊とインターネットの普及により、世界のグローバル化が進みます。
これにより、広範囲の歴史を研究するグローバルヒストリーが注目を集めます。
21世紀―学問横断系ベストセラー作品の登場
21世紀には、他の学問を統合した歴史学の作品が人気となります。
専門知識がなくても読める作品もあり、経営者やインフルエンサーに支持されることもあります。
アメリカの生物学者ジャレド・ダイアモンドは、環境・地理的要因から歴史を考察した『銃・病原菌・鉄』を発表し、世界的ベストセラーとなりました。
イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリは、認知の視点から人類史を描いた『サピエンス全史』、テクノロジーや人類の未来を考察した『ホモ・デウス』を発表し、世界的ベストセラーとなりました。